コラム

美食の国フランスより日本の給食はおいしい

2019年12月19日(木)17時10分
西村カリン

日本は給食のおかげで「過体重」の子供の割合が低い Toru Hanai-REUTERS

<日本はフランスのような工場ではなく、調理員が毎日、栄養バランスの良い食事を作ってくれる>

「ママ、今日、学校の給食がとてもおいしかった!」。初めて長男がそう言ったとき、びっくりした。なぜなら、私は学校で食べた昼食を「とてもおいしい」と思ったことが一度もなかったからだ。

私はフランス人で、日本の学校に通ったことがない。フランスと言えば、優れた食文化というイメージがあるだろう。でも現実はちょっと違う。最近フランスで起きた事件から、それがよく分かると思う。保育園で提供されている赤ちゃん用の給食の中からプラスチック、ネジ、骨などが発見されたのだ。ものすごく危険で私もショックを受けたが、けが人が出なかったから、それほど大きいスキャンダルにはならなかった。フランスって不思議な国だ。

食文化が世界で最も評価されている国で、こんなひどいことが起こったのはなぜ? まず、いくつかの保育園の食事が大きな工場でまとめて作られていることが主な原因と思われる。工場で働いている人々は、自分たちが作った料理を誰がどこで食べるかよく知らないし、赤ちゃんにも会わないから、意識が低いのではないかと思う。それに、工場を経営する大企業の目標は子供の成長や健康でなく、利益を出すことだ。

偶然だが、この事件があったのとほぼ同時期に、日本の保育園と学校の給食に関するニュースが話題になった。ユニセフ(国連児童基金)が発表した、世界の子供たちの栄養状態についての報告書だ。調査した40余りの国のうち、日本は「過体重」の割合が最も低かった。ユニセフは、太っている子供が少ない理由として「全国的な給食システムによって、子供たちに栄養のバランスの良い食事を安価に提供することができ、子供たちが栄養について学ぶ機会にもなっている」と指摘した。なるほどと思った。

フランスではほとんど「加工食品の組み合わせ」

私の子供は2人とも毎日、保育園と小学校で昼食を食べている。フランスなら、大変心配したと思う。日本だから安心できる。日本の認可保育園ではフランスのような工場ではなく園内で、専門家の指導を受けた調理員が毎日一生懸命、栄養バランスの良い食事を作ってくれる。私はほぼ毎朝、次男を保育園に連れて行ったときに調理員に会い、お互いに挨拶する。だからこそ彼らは心を込めて料理を作ってくれるのだと思う。工場なら無理だ。

残念ながら、フランスではほとんどのメニューが「加工食品の組み合わせ」と言っても過言ではない。大企業から保育園まで、多くの食堂に同じ食品会社が食事を提供する。つまり、1日で数百万人前。良い料理にはならず、子供に対する食の教育にもならない。しかも、最近は宗教や親の考え方によって特別な要求のある子供が増え、学校が対応するのが難しくなってきた。日本でも今後、外国人の子供が増え、同じような問題が出てくるかもしれないが、今のところそんな議論はあまりなさそうだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story