■食材本来のおいしさ知って
県立太田二高(常陸太田市新宿町)で16日、「伝統料理講習会」が開かれ、2年生の男女55人が、宮内庁大膳課の高橋恒雄元主厨長(しゅちゅうちょう)(73)から弁当作りの手ほどきを受けた。主厨長といえば、皇室の健康を守る「天皇陛下の料理番」。若い世代の食生活の乱れが指摘される中、生徒たちは、食育の大切さを実感したようだ。(丸山将)
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「化学調味料に慣れているみんなには、食材本来のおいしさを知ってほしい」
同高の調理室で高橋さんは手本となる料理を作りながら、そう語った。生徒たちはその話に熱心に耳を傾け、一つ一つの動きを真剣なまなざしで見つめていた。
完成した料理は豚丼、いなりずし、キュウリの即席漬けなど。食材はすべて県産だ。豚丼といなりずしには、高橋さんが「簡単万能たれ」と呼ぶ特製のたれが使われ、見た目はシンプルながら、豊かな香りを放っていた。
「おいしそう!」
生徒からは感嘆の声が漏れた。高橋さんは特製のたれと、そのたれを使って短時間でおいしく作れる料理を伝授。生徒たちは同じようにいなりずしなどを作り、持ち込んだ弁当箱に盛り付けていった。普通科の檜山祐樹君(16)は「見るのとやるのとでは大違い。料理は難しいけど、楽しい」と話した。
同講習会は、伝統料理に関する知識を深めるとともに、地元の食材を生かした料理作りを体験することで、食育の大切さを学ぶのが狙い。
平成26年の厚生労働省の栄養調査によると、1日の野菜類摂取量の平均値は男性は300・8グラム、女性は285・0グラム。年代別に見ると20代の男性が237・1グラム、女性が238・9グラムと男女とも20代が最も低い。朝食の欠食率でも平均値は男性が14・3%、女性が10・5%なのに対し、20代は男性37・0%、女性23・5%と最も高い。
お茶の水女子大生活科学部食物栄養学科の赤松利恵教授は「若い世代ほど健康への意識が低いことなどが原因として考えられる」と分析する。同高の場合、生徒の多くは卒業後に就職するため、武藤秀之教頭は「講習会を生かして、卒業後もしっかり食事を取ってほしい」と話していた。
「料理は楽しいもの。将来の健康のためにも、気軽に親しんでほしい」
高橋さんのメッセージは生徒たちの胸に刻まれたに違いない。