減らしたい! 給食の食べ残し 1人年間7.1キロと推計【給食のいま@しずおか⑤】

ある日の小学校一クラスの残食。この日は少なかったという
ある日の小学校一クラスの残食。この日は少なかったという

 「私の勤務校には給食があります。しかし私個人としては給食ではなく、弁当持参を望んでいます。理由は給食の残食が多すぎるからです。無理やり食べさせることはしません。食べる量は子どもたち自身に任せています。毎日大量の残食があります。弁当などにすれば、こうした問題も解決できるのではないかと思っています」
(静岡市駿河区、30代、教員)

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 現役教員から、気になる声が寄せられた。給食の残食はどのくらいあるのか。環境省が2015年度に全国の市区町村教育委員会に対して行った調査によると、残された給食の割合「残食率」は約3割の市区町村で把握していて、平均値は約6・9%だった。食べ残しの量は、子ども1人当たりに換算すると年間7・1キロと推計される。
 残食が多いならば、給食自体の量を減らすことはできないのだろうか。文部科学省は各種調査に基づき、児童生徒にとって望ましい栄養量を算出した「学校給食摂取基準」を示している。同省の通知ではこれについて「子どもの活動実態や地域の実情に配慮して弾力的に運用すること」としているものの、給食の提供量を極端に減らすことは現実的に難しそうだ。
 

児童・生徒1人あたりの年間の食品廃棄物発生量(kg/人・年)
(環境省、2015年「学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査」を元に作成)
 

 給食の残食をはじめ、食べ残しや売れ残りなどの理由で、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を「食品ロス」という。食品ロスの削減は世界的な課題となっている。動植物の命を無駄にしてしまう▽世界には食糧不足の人もいるのに、消費しきれない量が一部の地域に供給されることで貴重な食糧資源が無駄になる▽調理、販売、輸送などに要する人員やエネルギーが無駄になる▽食品ロスの焼却や堆肥化など処理にコストがかかるーなど、あらゆる問題点が指摘されているからだ。

 給食の食品ロスを減らすためにできることは何か。静岡県内では、県廃棄物リサイクル課が食べ残しなどの食品ロス削減を目指し、小中学校で出前講座を行っている。掛川市立第二小で行われた講座を取材した。

  photo01 県の職員による食品ロス削減のための出前講座。クイズなどを交え、食品ロスの現状を紹介した  

 「もったいなーい」。12月上旬、4年生の教室。先日の給食で食べ残された牛乳や焼き魚の写真が黒板に張り出されると、児童から大きな声が上がった。同課の職員は、食品の運搬時や食べ残しの焼却時に二酸化炭素が発生すると説明。食品ロスが地球温暖化の一因になっていると指摘し、地球温暖化による農作物の品質低下や異常気象の危険性も示した。
 児童は、食品ロス削減のために自らできる工夫を議論。食べきれる量を盛りつけたり食べきるよう心掛けたりと、給食時に取り組みたい行動を確認した。島岡由衣さん(10)は「嫌いな物という理由だけで残さないようにしたい」と決意を話した。

  photo01 自分たちにできることを話し合う児童  

 環境省でも、学校給食の食べ残し削減のための自治体職員向けマニュアルを作り、啓発を進めている。マニュアルでは①量が多すぎる②給食時間が短い③嫌いなものがあるーと、食べ残しが発生する理由を解説。配膳時間の短縮、給食残渣由来の液肥による野菜栽培、野菜をハート形や花形にするといった調理の工夫など、モデル事業の取り組みをまとめた。児童自ら食品ロス削減の目標を設定して家庭や給食で実践した「いただきました!チャレンジ」(藤枝市)の例も掲載されている。
 モデル事業の実施校の中には、食べ残しが34%減った学校もあるという。この他、全国では給食の調理残渣や食べ残しを堆肥化、飼料化するなどの取り組みも行われている。

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