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食物アレルギー 給食への備え<下>除去より耐性獲得へ 経口負荷試験の導入増

 4月の入学、入園シーズンを控え、食物アレルギーがある子どもの保護者はどんな心構えを持てばよいのか。前回(上)(13日付)は、定期的に医師の診断を受けて症状の程度などを伝える「指導表」を学校や保育所に提出する重要性を強調した。今回は最新の医療技術や受診する際の注意点を紹介したい。

 「どこか、かゆくなったところはない?」。今月3日、国立病院機構福岡病院(福岡市南区)の一室で行われた食物アレルギーの経口負荷試験。六つのテーブルを囲んだ食物アレルギーがある子ども9人の様子を、医師2人と栄養士6人が慎重にチェックしていた。

 この日、乳製品アレルギー克服のため、負荷試験に臨んだ6歳の女児はクリームシチューに挑戦した。目標とする総負荷量160グラムを(1)15グラム(2)30グラム(3)40グラム(4)75グラム-と、少しずつ量を増やしながら4回に分けて食べた。15~20分間隔を開けながら約2時間。じんましんや呼吸困難などアレルギー症状を起こすことなく試験を終えた。

 「よく頑張ったね。家でも少しずつ試してみてね。次はもう少し牛乳を濃くしてみようか」。主治医の小野倫太郎医師(35)の呼び掛けに、女児は満面の笑みを浮かべた。

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 女児は、生後3カ月ごろから時折、全身にじんましんができるようになった。地元の皮膚科医院の血液検査で牛乳、卵、小麦、米、大豆の食物アレルギーの陽性反応が出た。

 「ほとんど食べられる物がない。目の前が真っ暗になった」と母親(35)は振り返る。自身が牛乳と卵を食べずに母乳をやった。1歳を過ぎてから月1度のペースで大分県日田市から同病院に通院しながら経口負荷試験を受け続けている。アレルギー反応の検査数値が低かった大豆と米はすぐに克服。今では小麦もほぼ食べられるようになった。4月からの小学校入学を前に乳製品にどこまで耐えられるか最終チェックをしている。

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 食物アレルギーかどうかは血液検査で確認するのが一般的だが、それだけでは正確な診断ができないという見解が、医療現場で主流を占めつつある。

 さらに、患者側には「どこまで食べられるか」を知りたい、というニーズがある。食物アレルギーには特効薬はなく、原因食材(アレルゲン)を食べずに自然に耐性を獲得するのを待つのが基本だが、ずっと除去を続けていると栄養バランスが悪くなり、健全な成長を阻害するからだ。外食ができなかったり、家族と食事を別にしないといけなかったり日常生活にも負担がかかる。

 そこで注目されているのが、この経口負荷試験だ。専門医の観察の下で実際にアレルゲンを含む食品を食べながら、どのくらいの量で発症するか、どういう症状だったのかを確認する。安全に食べられる量を少しずつ増やしながらその人の耐性を確認し、食べられる物を探すのだ。

 保護者のニーズの高まりから、経口負荷試験を導入する医療機関が増えているが、30年近く食物アレルギーの診療に当たっている中村学園大客員教授で同病院の柴田瑠美子医師は「負荷試験はアナフィラキシーショック(血圧低下や意識障害などの急性症状)を起こす危険性と隣り合わせ。試験に踏み切るかどうか専門医と専門病院の判断を仰いでほしい」としている。

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〈九州で経口負荷試験を実施している主な医療機関〉
 福岡県=国立病院機構福岡東医療センター、福岡徳洲会病院、国立病院機構福岡病院、福岡大病院▽佐賀県=佐賀県医療センター好生館、国立病院機構嬉野医療センター、佐賀大医学部付属病院▽長崎県=長崎大病院▽熊本県=国立病院機構熊本医療センター、熊本市民病院▽大分県=大分大医学部付属病院、国立病院機構別府医療センター▽鹿児島県=鹿児島市立病院


=2015/03/20付 西日本新聞朝刊=

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