静岡県内でコロナ倒産増加 4月は食品製造など6件
東京商工リサーチ静岡支店は14日、4月に静岡県内で倒産した24社のうち、新型コロナウイルス関連が6件だったと発表した。外出自粛などで売り上げが急減した小規模な食品メーカーが多かった。資金繰りが苦しくなっていた企業が新型コロナをきっかけに経営が行き詰まった。政府は静岡県の緊急事態宣言を解除すると表明したが、関連倒産は続きそうだ。
4月の県内の倒産件数(負債額1000万円以上)は前年同月比7件増の24件。負債総額は2.9倍の74億9300万円だった。
「創業以来60年にわたり、多くのお客様にご愛顧を賜り、言葉では言い尽くせないほど感謝の気持ちでいっぱいです」。ロールケーキ製造の藤栄堂(静岡市)は4月20日に事業を停止し、破産を申請した。店舗に掲示した文書には事業を継続できなかった無念さがにじみ出ていた。
1960年代に創業した同社は長さ50センチメートルのロールケーキが有名で、県内に5店を展開していた。ただ、近年はコンビニエンスストアなどとの競合で売り上げが急減。関係者によると、資金繰りが悪化する中で他社への事業承継を模索していたが、外出自粛の影響で土産物需要が激減し、事業継続を断念した。
新型コロナの影響で4月に倒産した6社のうち4社は食品メーカーだ。破産手続きの開始決定を受けたトキワサンコウ(浜松市)は取引先の学校が休校になったことで給食向けの豆腐が売れなくなった。
菓子「うなぎボーン」のカネキ水産(吉田町)は金融機関から返済計画の見直しなどの支援を受けていたが、新型コロナで受注が落ち込んだ。民事再生手続きの開始を受け、取引先がスポンサーになって再建を目指す。
負債額が24億円と最大だった貸衣装のラビアンローゼ(浜松市)と関連会社のウインクル(同)は過去の出店による資金負担が重く、資金繰りに行き詰まった。新型コロナの感染拡大を受けて貸衣装や結婚式のキャンセルが相次ぎ、民事再生法の適用を申請した。
東商リサーチ静岡支店の武田康宏チームリーダーは4月のコロナ関連倒産の傾向について「債務超過や債務繰り延べなどを受けていた企業がコロナの影響で売り上げが急減して倒産した」と分析。同支店が3月末に実施したアンケート調査では、県内企業の6割が「(コロナの)影響が出ている」と回答。5割近くが「(資金繰りに)影響がある」と答えていた。
休業要請を受けた飲食店の倒産はなかったが、今後はこうした業種でも経営破綻が増えそうだ。居酒屋を運営するライフシナジー(静岡市)は3月の売り上げが例年の1~2割に落ち込み、破産申請を準備中だ。
民事再生法や破産法などの法的手続きや銀行取引停止といった倒産に至る前に廃業するケースも増えそうだ。4月末に閉館したホテル沼津キャッスル(沼津市)は訪日外国人客を中心とする宿泊者が減り、事業継続が難しくなった。取引先への支払いなど資金面で余力のあるうちに廃業を決めた。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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