「愛情が弁当で測れるの?」選択制の学校給食めぐり議論

有料記事

小林正典
[PR]

 京都市の中学校給食は「選択制」で実施されている。小学校のような全員制ではなく、弁当を持ってくるか、業者の工場から配送される給食(1食310円)をとるか、選択する。京都府教委などによると、府内の自治体で全員制給食への動きが見られないのは、京都市と亀岡市のみだ。

 昨年12月下旬、京都市立嵯峨中学校(右京区)の昼食の様子をのぞかせてもらった。午前の授業終了を知らせるチャイムが鳴ると、配膳室に次々と生徒が訪れ、クラスごとに籠にまとめられた選択制の給食を教室に運んでいく。

 3年生の教室では、給食の準備が整うのを弁当持参の生徒が待って、一斉に昼食がスタートした。この日はご飯のほか、ミンチカツや大根菜の煮浸しなど。給食を注文している女子生徒にメニューについて聞くと、「カレーがおいしい。温かいので」。1年生の途中から給食に変えたという男子生徒は「母は『作るのが大変だったので助かる』と言っている」と話した。

 京都市内六つの施設一体型小中一貫校では、中学校の全員制給食が実施されている。それが、他校の保護者らが不平等感を募らせる一因だ。市教委の担当者は「小中一貫校をつくる際、地元の意向を受けて全員制にした」と語る。

 「教育として、格差や不平等なく実施してほしい」。昨年12月に中京区であったシンポジウムで、中3の子を持つ山科区のパート長田奈央さん(46)は訴えた。シンポは9月に発足した「小学校のような全員制の中学校給食をめざす連絡会」が開催。会場の母親からは「愛情が弁当で測れるのか? 弁当だけで愛情は測れないという見方を広めたい」との発言が飛び出し、ひときわ大きな拍手が起きた。

 同連絡会は「歴然とした学校間格差・不平等は、見過ごすことのできない問題」と主張。「すべての中学校で小学校のような全員制の安全で温かい中学校給食」を求める署名活動を展開中だ。今月、市長ら宛てに提出することを目指しており、すでに1万5千筆を超えたという。

 京都市教委は今年度、約20年ぶりに約2千人の生徒を抽出してアンケートを実施。今回は保護者も対象とし、今月下旬をめどに集計する予定だ。ただ、全員制給食の導入について直接尋ねる項目はなく、自由記述欄があるのみ。市教委の担当者は「選択制の給食を充実させるのが調査の目的」と理由を説明する。

 同連絡会の江本佳世子事務局長は「半歩前進」としながらも、選択制ありきのアンケートを批判する。「20年前と比べ、共働きが増えるなどライフスタイルも変化している。部活動の朝練前に弁当を作るのは本当に大変だ」

 京都市教委は選択制の意義について、「弁当づくりで愛情を注ぎたいという保護者もいる」としている。

 大阪市では2012年9月か…

この記事は有料記事です。残り679文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら