「公認キャンプ地」シリーズ第2回は静岡県御前崎市。過去2回の優勝を誇る南アフリカとジョージアを受け入れる。なじみが薄い両国の文化を学ぶために、幼稚園や小中学校の給食で「ワールドカップ(W杯)応援メニュー」と題した郷土料理を提供している。

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6月上旬、学校給食の献立表に一風変わった“珍品”が登場した。ソフト麺、牛乳、ナポリタンソース、キャベツとコーンのサラダ、果物の定番メニューに加え…オジャクリ。ジョージアの代表料理で、ジャガイモや豚肉などを塩こしょうで炒めたものだ。「これ何? 見たことない」「おいしい」。教室ではこんな声が飛び交い、児童たちは笑みを浮かべながら珍味に舌鼓を打った。

6月に提供されたジョージアのオジャクリ(上段右)(御前崎市提供)
6月に提供されたジョージアのオジャクリ(上段右)(御前崎市提供)
ジョージアのオジャクリが提供された6月の献立(御前崎市提供)
ジョージアのオジャクリが提供された6月の献立(御前崎市提供)

昨年8月、御前崎市が南アフリカとジョージアの公認キャンプ地に決まった。市は、子供たちが両国の文化に親しめるようにW杯給食を企画。給食センターの栄養士がインターネットで調理方法を調べて、試作を繰り返した。食べやすいように日本風のアレンジも加えた。今年1月から大会期間中の10月まで月1回実施し、市内の幼稚園5園と小中学校7校(計約3200食)に両国の郷土料理を交互に提供する。4月には、南アフリカの国民食「ボボティ」を献立に加えて、好評だった。牛肉入りグラタンのような仕上がりで、おかわりする児童らが続出したという。市商工観光課の増田智明氏(25)は「両国を身近に感じるには、分かりやすい食が一番。学校給食を通じて、W杯の機運醸成にもつながると信じている」と期待した。

御前崎市役所のロビーのW杯特設展示スペース(御前崎市提供)
御前崎市役所のロビーのW杯特設展示スペース(御前崎市提供)
商工観光課の職員が毎週水曜日に着ているオリジナルポロシャツ(御前崎市提供)
商工観光課の職員が毎週水曜日に着ているオリジナルポロシャツ(御前崎市提供)

市民への認知度向上のため、市役所ロビーには両国の代表ユニホームを始めとする特設展示スペースも設置。商工観光課の職員10人は、自費購入した静岡県製作の赤のオリジナルポロシャツを毎週水曜日に着用してアピールする。背中には、日本対アイルランドなどエコパスタジアムで行われる試合日程が記載されている。増田氏はこう願う。「世界のトップ選手が訪れる貴重な機会。積極的に交流を図り、開催都市だけでなく、御前崎市も覚えてもらいたい」。約3万2000人の小さな街の大きな挑戦が始まる。【峯岸佑樹】