専用棚から取り出した除去食を調理員から受け取る教諭。横にある受取表にもチェックをする(京都市伏見区・伏見南浜小)

専用棚から取り出した除去食を調理員から受け取る教諭。横にある受取表にもチェックをする(京都市伏見区・伏見南浜小)

 「子どもに食物アレルギーがある。子どもの学校の対応しか分からず、ほかの学校がどうしているのか知らない。命に関わることなので、どのような研修をしているのか教えてほしい」。京都市内の主婦(38)から京都新聞の双方向型報道「読者に応える」にそんな取材依頼が寄せられた。学校現場の取り組みを取材した。

■ラップの上に児童の名前や除去した食材

「いただきます!」。3月中旬のお昼時、伏見南浜小(京都市伏見区)1年1組の教室に、児童の明るい声が響いた。目の前にはほかほかの給食。その中にラップが掛けられたお皿があった。

 アレルギー食材を使わない「除去食」だ。この日のメニューのうち、卵を使う「あげたま煮」で卵を入れない除去食が用意された。

 お皿は通常の白い食器と異なる黄色を使用。ラップの上には、児童の名前や取り除いた食材などを記した付せんが貼られ、普通のおかずと混在しないよう工夫されている。

 「おいしい」。いただきますの合図で外すことになっているラップを取った児童たちも、笑顔になった。

 朝礼では、当日の給食に除去食があることをクラス全体で確認した。担任教諭は「子どもたちはアレルギーがある子のことを知っている。周囲に知らせることが安心につながる」。

 教室外でも誤配を防ぐルールが随所に見られる。給食室前にずらりと並ぶおかずの棚の端に、除去食専用の区画がある。児童ではなく、教諭がそこから除去食を取り、傍らの受取表に丸を付ける。教室に運び、該当する児童に確実に渡す。給食室では、卵を扱う時にだけ着る専用エプロンや、除去食用の調理器具をそろえている。

 除去食の提供は、家庭で確認してもらった献立表を基に行っている。保護者や児童は、あらかじめ学校から配られた献立表をチェックし、食べられない食材や調味料に印をして学校に提出している。

 献立表は教室や職員室に保管。教室では、担任の机にある右上の引き出しに入れると決めている。誤食した場合の児童個別の対応マニュアルも一緒に置き、担任が不在でもすぐに分かるようにしている。

 職員朝礼でも除去食があることを共有し、何重にもチェック体制を敷いている。それでも、「担任が急な対応で手を取られ、配り間違いをするかもしれない。大事なのは、人間はミスをする可能性が絶対ないとはいえない、という前提で確認すること」と、栄養教諭の小林清子さん(60)=3月末で退職=は話す。

■手引きの策定も

 こうした小学校でのアレルギー対応について、京都市教育委員会は2015年に手引きを策定し、各校の足並みをそろえた。運用が曖昧だった、医師の診断に基づく「学校生活管理指導表(食物アレルギー用)」の保護者からの提出を必須にした。除去する食材は、鶏卵とうずら卵のみ。「調理設備や人員に限りがある」(体育健康教育室)ためという。パック入り牛乳は、アレルギーのある子どもには出さない。

 卵と牛乳以外にも、小麦や大豆、豚肉などアレルギーを引き起こす食材は多くある。こうした食材や調味料を給食に使う場合は、アレルギーのある児童に、給食を食べずに弁当を持参するよう求めている。

 症状が軽かったり、児童が食材を理解したりしていれば、児童がお皿から食材を取り除くケースもある。

 食物アレルギーのある子どもは、18年4月時点で市立小全児童の5%を占める。誤食などによるショック症状を一時的に和らげる注射薬「エピペン」の使い方について、市教委は教職員の研修を行っている。