コメに続け、ブランド小麦 九州・山口でも続々と誕生

 パンや中華麺向けのブランド小麦が、九州をはじめ各地で誕生し、生産が活発化している。小麦は国内流通の大半を海外産が占めてきたが、消費者の国産志向の高まりを追い風に、品種改良で安定供給に近づいたことから存在感が強まる。食品メーカーも国産小麦に着目し、使用を増やしている。

 「地元発ブランドへの関心の高まりを感じる」

 長崎県などが開発し平成28年に商標登録した小麦ブランド「長崎ちゃん麦」の生産農家、角信行さん(74)は手応えを口にした。

 主に長崎名物「ちゃんぽん」向けの品種は、麺にしたときの伸びにくさと、歯触りの良さが特長だという。29年11月に県内で開かれた試食会では、用意した400食がすぐになくなった。

 戦後、学校給食でのパン採用など食の欧米化で小麦消費量が増えた。安価で質の良い海外産が、国内市場を席巻し、国内農家の生産は縮小した。農林水産省によると、9割を輸入に依存している。

 ただ、輸入小麦は一定の輸送コストがかかる上、産地の作柄次第で、世界的に高騰する可能性がある。長崎県の担当者は「(輸入は)価格決定に不安定な要素が多い」と、国産の重要性を強調する。

 ◆安心感

 敷島製パン(名古屋市)の担当者は「国産ブランドが消費者に安心感を与えている」と話す。海外産の不作をきっかけに20年、北海道産ブランド「ゆめちから」を使ったパンの開発に着手した。29年度、国産小麦を使った売り上げは約100億円に達した。32年までに製品の2割前後を国産小麦にする方針だ。

 こうした国産小麦の売れ行き増加を背景に、新品種は全国に広がる。博多ラーメンで知られる福岡県では、中華麺用品種「ラー麦」の栽培を21年産から本格的に開始した。30年3月末現在、県内ラーメン店の約220店、県外約240店が採用する。

 ◆警戒

 全国有数の米の産地、福井県でも、県立大が研究の中心となり寒さや梅雨に適応した県産初の小麦ブランド「ふくこむぎ」を25年に商標登録した。県立大は国産のものでは珍しいパスタ用品種の開発も、進めている。

 国産強化の流れの一方、産地では将来への不安も抱く。政府が17日署名した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)では、パスタや菓子の輸入関税が、段階的に撤廃される。都道府県別で全国1位の生産量を誇るJA北海道中央会は「国産製品の売れ行きに影響を及ぼす可能性がある」と警戒し、政府に生産者への対策を求めている。

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