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給食のハテナ?(1)国際化 新メニュー相次ぐ

今年のテーマは「世界の料理」

 シャン・カウスエ? 給食の献立表を眺めていて、思わず目に留まった。息子が通う福岡市の小学校で配られたものだが、何の料理なのか全く見当がつかない。

 よく読むと、ミャンマーの麺料理とある。麺は米から作られ、澄んだスープに細切り肉やトマトが載っているという。最近は、国際化の波が給食にも及んでいるのだろうか。

 そもそも、こうした献立はどのようにできあがるのだろう。福岡市博多区にある東光小学校の栄養教諭、大津絵梨さん(40)に聞いてみた。

 「1年前の夏休みに会議を開き、大まかな献立を決めるんですよ」。本年度分の給食であれば、昨年夏に栄養教諭や市教育委員会の担当者ら約30人で話し合った。給食を出す月の担当を2人ずつ決め、それぞれが例年の献立を参考に提案。年間を見渡し、メニューのバランスを考えて調整していくという。

 このとき、年間テーマも決める。本年度は前年に続き「世界の料理」。2020年開催の東京五輪を見据え、世界の国々に関心を持ってもらうのが狙いだ。ちなみに18年度は「福岡市内産の食材」。今度は逆に、足元の地域に目を向けてもらいたい考えだ。

   ◇   ◇

 献立には制約もある。福岡市の小学校の場合、献立は149校に反映され、計約8万6千食分。食材の大量調達に支障がないよう、提供日をずらした5パターンの献立表を用意するが条件を満たすのは容易ではない。

 1食分は243円。魚でも「魚介類」や「小魚類」など、食材を細かく分類し、国の基準値と市の目標値をそれぞれ設定。月ごとにその数値目標達成に向け、メニューを考える。

 学校ごとの調理室で作る「自校方式」の福岡市は、生魚をさばくのが難しく、冷凍した切り身を使う。学校で蒸して調理するため、焼き色もあらかじめ付いたものを選んでいるそうだ。

 その食材は教諭や調理員らでつくる選定会で決める。イカや干しシイタケなどの種類ごとに入札を行い、予算内に収まるものを実際に食べ比べ、味や値段、見た目、産地などを協議して決めていく。こうした条件を踏まえ、本年度の新献立にはインドネシアの焼きそば「ミーゴレン」も登場した。

 多国籍化する給食メニューを、子どもたちはどう受け止めているのか。息子に聞くと「よく覚えていないけど、おいしかった」。教育効果はともあれ、まあ、おいしいのが何より。

   ◇   ◇

 来年2月の献立を担当する大津さんも新メニューを提案した。数年前から考えていた「長崎皿うどん」。なるほど、これも「世界の一つ」だ。味だけではなく、食べ方にもこだわる。

 袋入りのパリパリ麺を児童が自分で適度に割り、皿に出す。その上に別皿のあんをかけるのが特徴だが、ほかの栄養教諭からは指摘が相次いだ。

 「寒い時期に冷める」「食べ方を知らない児童もいる」。「寒さ」はスープを一緒に出すことで、「食べ方」については手順を記したプリントを配り、学級担任から説明してもらうことで解消した。主食のロールパンに対し、「皿うどんにはご飯では?」という注文もあった。でも給食用の皿は3皿。袋から出した麺を入れる皿と、あんを入れた皿があるため、残り1皿をご飯に使えば、おかずは皿うどんだけになってしまう。大津さんはスープを優先させることにした。

 皿うどんにこだわったのは、修学旅行で長崎に行き、皿うどんを食べた思い出を想起させたいとの思いからだった。「ワクワクしながら食べてもらいたいですね」。子どもたちが何げなく食べている給食には、大津さんら栄養教諭の思いや工夫が「スパイス」としても込められているのだ。 (四宮淳平)

 

 ◆多様化する学校給食 食文化の継承、地産地消、食育などの視点から、九州各県の学校給食は多様化している。ざっと調べただけでも、大分県日田市は11月に初めて「イノシシ肉と根菜のみそ煮」を取り入れた「ジビエ給食」を導入▽同県佐伯市は7月、市内で養殖されたアユを全ての幼稚園と小中学校で給食メニューに▽佐賀県太良町には、佐賀牛を使ったカレーなど「たら産うまかもん給食」▽福岡県宗像市では、宗像漁協から提供された特産のカナトフグが小中学校の給食に。地域色も豊かだ。

 

=2017/12/03付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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