静岡県29年度予算案 お茶文化の継承に7000万円計上 子供への教育を充実

 小中学生に静岡茶に親しんでもらうための「小中学校の児童生徒の静岡茶の愛飲促進に関する条例」(静岡茶愛飲条例)が、昨年末に施行された。給食でお茶を提供したり、学校に日本茶インストラクターを招いてお茶のいれ方を学ぶことなどを想定しており、平成29年度予算案に関連経費7千万円を盛り込む方針。さらに、4月に保護者や学校関係者、有識者らで構成する「静岡茶の愛飲に関する県民会議」を発足させ、児童生徒へのお茶教育の具体策について検討する。

 この条例では、児童生徒がお茶に親しむため、行政側に「小中学校で児童生徒が静岡茶を飲む機会や静岡茶の食育の機会を確保する」努力義務を課した。県お茶振興課では、「お茶が健康にいいことは明らかになっており、小さいころからお茶に親しみ、児童生徒の健康増進と郷土を愛する気持ちの醸成に役立てたい」と条例制定の目的を話す。

 県教育委員会によると、27年度には県内の公立小中学校776校のうち、203校(26%)でほぼ毎日お茶が提供されていた。県に先駆けて「めざせ茶どころ日本一」条例を策定した静岡市では、26年度から小学5年生全員に家庭科の授業でお茶のいれ方を教え、全市立小学校に茶器セットを配布して授業や学校行事での使用を促している。27年度からは市内の小学校79校(87%)で、日本茶インストラクターらによる「お茶のいれ方教室」が行われた。

 しかし、ペットボトル入りの茶飲料が普及したことで、茶葉を使って急須でお茶をいれる文化は急速に衰退している。総務省の家計調査報告などによると、1世帯当たりの茶葉の購入金額は平成12年の6810円をピークに年々減少。19年に茶飲料の購入金額が茶葉を逆転し、27年には茶葉の4096円に対し、茶飲料は約1・5倍の6151円だった。

 日常的にお茶を飲み、急須でお茶をいれる文化の継承には、次世代の子供たちへのアピールが欠かせないが、市町によって取り組みの温度差が大きい。このため県では「全県的な仕組みをつくりたい」と、給食での提供など学校でお茶が飲める環境を整えたり、授業で急須による正しいお茶のいれ方を指導するなどの施策を検討している。

 さらに県は、島田市の「お茶の郷博物館(休館中)」を改修して平成30年度に「ふじのくに茶の都ミュージアム」としてオープンさせる予定。本格整備は29年度になるが、今年度2月補正予算案に整備費の一部を前倒しして計上し、早期に施設整備を行って子供たちへのお茶教育の拠点として活用する方針だ。

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