横浜から岩手・大槌町へ寄贈した漁船「瀬谷丸」の新鮮な魚が給食に

 ■横浜市立二つ橋小、継続的に提供「思い次世代へ」

 横浜市瀬谷区の企業経営者ら有志が東日本大震災の津波被害で漁船を失った岩手県大槌町の新おおつち漁業協同組合に贈った漁船「瀬谷丸」で取れた魚を使ったメニューが今秋、市立二つ橋小学校(同区)の給食に登場する。大震災から5年以上がたち、記憶の風化も危惧される中、関係者は「瀬谷丸が再び注目されるきっかけになれば」と期待を寄せる。(那須慎一)

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 「サケは身が厚くて食べ応えがある」

 「しっかり甘みもあるね」

 今週、同小に集まったPTA役員や教諭らが瀬谷丸で取れたサケとサバをフライにし、試食会を行った。骨も少なく、児童が食べやすいことなどから、サケのフライを出す方向で意見が一致。今後、教育委員会などと相談した上で、9月末をめどに給食で出す方針を決めた。

 瀬谷丸の誕生は平成24年に遡(さかのぼ)る。同年3月、同区内の有志が集まって大槌町の漁協に定置網漁船を贈ろうと募金活動を始めた。目標金額の3千万円達成は簡単ではなかったが、区民を中心とした温かい心の輪が次第に広がり、最終的には約3カ月間で3625万1079円と目標を大きく上回る額が集まった。25年6月、国の補助金分も合わせて全長24・8メートル、19トンの定置網漁船「瀬谷丸」が完成し、無事進水した。

 同小では、給食での提供前に全校集会を開き、瀬谷丸メニューが誕生した経緯を説明した上で味わってもらう計画を立てている。宮路ますみ校長(52)は「今の豊かな暮らしの中で、食べ物に感謝し、料理の作り手の思いを受けて味わって食べるという食育の意味も込めて、しっかり指導したい」とし、1回限りの特別メニューで終わらせず、継続して提供できるよう検討する。また、同区内の他の小学校にも取り組みが広がるよう働きかけていくという。

 瀬谷丸寄贈プロジェクトに奔走し、今年3月に解散した「三陸沖に瀬谷丸を」では実行委員会長を務めた露木晴雄さん(36)は、同校のPTA会長として試食会に参加した。「学校給食のメニューになり、活動が継続することで、『瀬谷丸』を寄贈した思いを次の世代につなげていってもらえたら」と力を込める。

 同区の地元スーパーや飲食店では瀬谷丸産の魚がすでに出回っており、今回の給食提供で、さらに認知度を高めたい考えだ。

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