マイケル・ムーアが世界中を「侵略」する理由 「良い制度は持ち帰って米国も見習うべき」

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『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』では、マイケル・ムーア監督が世界中で「各国のいいとこ取り」を試みる (C)2015, NORTH END PRODUCTIONS
過激なアポなし取材と歯に衣着せぬ物言いで、社会問題を独自の視点で一刀両断してきたマイケル・ムーア。銃規制をテーマにした『ボウリング・フォー・コロンバイン』で米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を、対テロ戦争を題材とした『華氏911』でカンヌ国際映画祭パルムドールを獲得するなど、国内外を問わず絶大なる評価を受けている。
しかし、現在、全国公開中の最新作『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』では、天敵であったはずの米国防総省の片棒を担ぎ、ムーア自らが“侵略者”となって世界各国に潜入するという驚きの展開を見せている。ムーア監督がそこで見たものは、「イタリアの労働環境」「フランスの給食」「フィンランドの教育」「スロベニアの大学」「ドイツの労働者」「ポルトガルの犯罪」「ノルウェーの刑務所」「チュニジアの女性進出」「アイスランドの男女平等」などなど。今のアメリカに必要なものをムーア監督は根こそぎ持ち帰ろうと試みる。
本作は、アメリカ国内に巣くうタイムリーな問題を批判し続けてきた不屈のジャーナリスト、マイケル・ムーアにとっての集大成とも言うべき作品となった。そんなムーア監督に新作への思いを聞いた。

「国防総省の協力」というのはファンタジー

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――国防総省の指令ということで、海外に行ったそうですが、彼らの協力体制はどうだったんですか?

あれは皮肉であり、ファンタジーだよ(笑)。協力してくれることはまったくなかったよ。

――しかし、ムーア監督がミッションを遂行するべく世界各国をまわる様子が、まるでジェームズ・ボンドのようでしたが。

まさに。その通りだね(笑)。

――髪の毛もワイルドなロン毛になっていて。カッコ良かったですよ。

サンキュー(笑)。

 ――この映画を作る際に事前のリサーチは行ったんですか?

あまりリサーチはしなかった。というのも、実際にいろんな国に行ってみて発見するものにしたいという心意気で行ったわけだからね。だから取材対象の内容については事前にリサーチはしなかった。ただ行けばきっとすばらしい結果が待っているんだろうな、といういい予感はしていた。イタリア人が有給休暇をたくさんとっているという話を聞いた時も、ポルトガルでドラッグを解禁しているのに犯罪者がいないという話を聞いた時も、僕は驚いていたと思うけど、あれは本当のリアクションなんだ。ニュース番組やドキュメンタリーなんかは、あらかじめ答えを用意した上で取材をするわけだけど、そんなわざとらしい芝居をするべきではない。だから前情報がなく、素直な気持ちで話を聞きに行ったんだ。

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