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補助費目にも自治体格差 クラブ活動、生徒会、PTA費の補助1割だけ

 生活が苦しい家庭を対象とした就学援助のうち、市町村が独自に認定基準や補助費目を定める「準要保護世帯」を巡っては、認定基準だけでなく、補助費目にも九州の市町村によって大きな格差があることが、西日本新聞とNHKの共同調査で明らかになった。

 政令市・県庁所在市はゼロ

 文部科学省は2010年度から、従来の学用品費や給食費などに加え、クラブ活動費▽生徒会費▽PTA会費-の3項目を補助費目として追加するよう全国に通知したが、九州で導入済みの市町村は1割にとどまり、全国平均(2割)以下だった。

 16年度の準要保護世帯への補助費目について、回答した九州215市町村・組合の教育委員会のうち、学用品費を支給するのは214教委(99・5%)に上る一方、追加3項目については、クラブ活動費=20教委(9・3%)▽生徒会費=21教委(9・8%)▽PTA会費=22教委(10・2%)-にとどまった=表参照。政令市と県庁所在地はいずれも未導入だった。

 3項目とも支給しているのは福岡県筑紫野市大野城市、長崎県西海市、熊本県合志市、大分県豊後大野市、鹿児島県出水市など。出水市によると、中学生の場合、年額でクラブ活動費1万8千円▽生徒会費1200円▽PTA会費4070円-を上限に支給しているという。

 文科省によると、生活保護世帯への就学援助については国が補助費目を定めており、国庫補助(補助率2分の1)がある。準要保護世帯については2005年度から国庫補助を廃止し、一般財源化した。国庫補助の減少分は地方交付税で補填(ほてん)され、「追加3項目分も交付税に算入している」(児童生徒課)という。

 ただ、補助費目や支給金額を決めるのは市町村・組合の教委。導入が遅れている理由について、同省の担当者は「補助費目が増えると自治体の財政負担が増えるためではないか」と話す。国庫補助の廃止が、就学援助の自治体間格差を生む一因となっている。

 「国が財源面で責任持つべきだ」

 就学援助に詳しい全国学校事務職員制度研究会(東京)の植松直人事務局長の話 就学援助制度は国が定めた制度なのに、市町村に責任が丸投げされ、財政力によって格差が生まれている。住む市町村の違いで援助を受けられる人と受けられない人が出ている。貧困対策の最優先課題は、就学援助をはじめ既存の制度の見直しだ。国が財源面でも責任をもち、学校と行政が両輪となって、親の所得や住む場所に関係なく、子どもたちが安心して学べる制度にすべきだ。

 「義務教育の保護者負担軽減を」

 子どもの貧困問題に詳しい跡見学園女子大の鳫(がん)咲子准教授(公共政策)の話 就学援助は市町村の事業のため、自治体間格差の存在自体が表に出にくい。今回のような調査は有意義で、本来は各県がやるべきだ。教育予算の拡充や情報公開など、国や県がもっと積極的に関与して就学援助の格差是正を急ぐ必要がある。同時に、就学援助を受けていない世帯のためにも、義務教育にかかる保護者負担を減らす取り組みが不可欠で、給食の完全導入と無償化、副教材の備品化などを進めてほしい。

 就学援助

 学校教育法に基づき、経済的理由で就学困難な小中学生の保護者を市町村が援助する制度。生活保護を受ける「要保護世帯」と、生活保護を受けていないが生活が苦しい「準要保護世帯」が対象。要保護世帯の補助費目は(1)学用品費(2)通学用品費(3)新入学用品費(4)修学旅行費(5)校外活動費(6)給食費(7)クラブ活動費(8)生徒会費(9)PTA会費(10)医療費-などがある。

 「準要保護世帯」の対象項目は各自治体が決め、(1)~(10)すべてを支給する福岡県筑紫野市の場合、年額で小学生は6万~10万円、中学生は9万~13万円。両世帯合わせた受給児童・生徒は2013年度で151万4515人(15・42%)。

=2016/05/30付 西日本新聞朝刊=

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