フィリピン大統領選、初の公式討論会 支持率拮抗で混戦
【カガヤンデオロ(フィリピン南部)=佐竹実】5月投票のフィリピン大統領選の候補者による初めての公式討論会が21日、人口約1億人の2割が住むミンダナオ島のカガヤンデオロ市で開かれた。有力候補4人の支持率が比較的拮抗する混戦で、6%前後の高い実質成長率でも残る格差の解消が焦点の一つ。南シナ海を巡る中国との領有権争いに関する各候補の姿勢も注目を集めた。
大統領は任期6年で現職のアキノ氏は憲法により再選が認められない。
主役の一人は女性のグレース・ポー上院議員(47)。討論会では「農作物の付加価値を高め、農家の現金収入を増やす。公立学校の給食も無料化を目指す」と述べ、マニラ首都圏と地方との様々な格差の解消に努める考えを示した。外交では中国を念頭に「シンガポールのように国防能力を高めるべきだ」とした。
調査会社パルスアジアによると、1月時点での支持率は同氏が30%でトップ。人気映画俳優フェルナンド・ポー氏の養子で清廉なイメージを前面に出す。だが米国暮らしが長く、比居住の期間が足りないとして選管から候補者資格を取り消され、最高裁が審議中だ。
副大統領のジェジョマル・ビナイ氏(73)の支持率は23%で2位。同氏がトップの別の調査もある。討論会で「インフラ不足解消のため外資誘致を進める」と主張した。高い経済成長の恩恵が地方に届いていないとしてアキノ氏を非難し、貧困層からの支持が高い。外交でも親米の同氏と異なり中国寄りとされる。
アキノ氏が後継指名したマヌエル・ロハス前内務・自治相(58)の支持率は20%。イスラム教徒が多いミンダナオ島の最大都市ダバオの市長で治安を重視するロドリゴ・ドゥテルテ氏(70)と並ぶ。同氏は討論会で「法の範囲内で犯罪者を殺害する」と過激だった。
フィリピン大のプロスペロ・デヴェラ教授はミンダナオ島の課題の農業振興を強調したポー氏を「評価する」と語った。
比の正副大統領候補は2人一組だが、投票はそれぞれあるため、現職のアキノ氏とビナイ氏のように対立する正副が誕生することもあり得る。知名度や組織力が左右する。有権者は約6千万人。