豪雨の農業被害、茨城・栃木2県で30億円超 コメやイチゴ
台風18号の影響による豪雨で茨城県と栃木県の農業被害額が30億円を超える見通しとなった。水田を中心に約9000ヘクタールの農地が浸水し、栃木でイチゴの苗が流出する被害も出た。14日までに両県で合わせて28億円の被害が判明しており、最も被害が大きい茨城県常総市の状況が確認されればさらに増えるのは確実。両県や農業協同組合(JA)などが対策を急いでいる。
茨城県では14日までに調査できた自治体だけで農作物の推定被害額が9億2200万円に上る。古河市、下妻市、守谷市などの水田1685ヘクタールが冠水したり浸水したりし、稲が倒れる被害にも遭ったコメの被害が5億400万円と最も大きい。収穫直前のコメが水にひたる状態が長引けば、穂の発芽などが発生し品質低下が懸念される。
白菜は筑西市、境町など28ヘクタールで7500万円、大豆は結城市など694ヘクタールで6800万円、キャベツ、レタス、ネギなどその他野菜は680ヘクタールで2億7300万円の被害があった。大豆などは生育期にあたり、収量減や品質低下が心配される。
被害が大きい常総市内の調査はできていないが、鬼怒川左岸の浸水農地は約2千ヘクタールとみられ、一部の大豆を除きほとんどが水田。刈り取りの進度は20%ほどにとどまる。
栃木県の農作物の被害額は、14日までの調査分だけで14億7800万円。施設などを合わせた農業被害全体では19億3600万円に上るが「まだ一部ではないか」(福田富一県知事)という。
コメが6億4100万円と最も大きく、面積では3900ヘクタールに相当。ニラが2億700万円、イチゴが1億9300万円、トマトが1億8600万円と続く。キャベツや大豆、洋ラン類もそれぞれ5000万円前後に達した。金額は大きくないが、県内特産のソバでも「最終的には6割程度出荷できないかもしれない」(壬生町の農家、中嶋正氏)といった被害例がある。
被害は浸水などが深刻だった一部の地域に集中し、鹿沼市が9億2700万円、栃木市が2億3600万円など。小山市は判明しただけでも約1億7千万円に上り、同市で調査が済んでいないニラやイチゴ、トマトの被害額はいまだ不明だ。
被害が大きい地域は、収穫量日本一で栃木県が特に力を入れるイチゴの一大産地と重なる。イチゴ農家115軒が加盟する壬生町苺(イチゴ)出荷組合は被害額が最大2~3億円になり、出荷額は約1割減の「15億円程度になるのでは」(梁島源智組合長)と見込む。ハウスごと流されてしまった農家では、今シーズンの収穫は困難という。
イチゴは、クリスマスケーキなどへの使用で需要が増える前の8~9月がハウスへの植え付け時期だ。冠水した苗や土壌の消毒や、流された苗の代替分の調達が要る。「代替苗が確保できなければ、イチゴの流通にも影響が出てくるだろう」(梁島組合長)という。
茨城では、JAグループ茨城が農業被害に対し低利融資を実施し、新たに住宅補修や家財購入に使える生活災害資金融資の導入も決めた。栃木でも県がイチゴの消毒などを技術指導するほか、JAグループ栃木などとも連携し、主力品種「とちおとめ」を生産する宮城県や福島県、埼玉県などに余った苗を譲り受けられるよう要請している。