【9月7日 AFP】フランスの公立学校の食堂で、豚肉を出すべきか否か?

 新学期が始まり、3つの町の町長が、教育と宗教を厳しく分離させた同国の厳格な原則を尊重することを理由に、学食での豚肉抜きの選択肢を禁止したことで、この問題が再び表面化し、差別だとする非難の声が上がっている。

 民主独立連合(UDI)のイブ・ジェーゴ(Yves Jego)議員は、世俗主義的原則を迂回(うかい)し、豚肉を食べないユダヤ人やイスラム教徒、一般的に肉を食べない多くのヒンズー教徒などのために、実用的な手段として、学校でベジタリアンの食事を提供することを義務づけるための草案を提出する意向だ。

「カトリックの子どもに、他に何もないからと、(イエス・キリスト(Jesus Christ)が十字架にかけられた)聖金曜日(Good Friday、受難日)に肉を食べろと、ユダヤ人やイスラム教徒の子どもに豚肉を食べろと強要できるのか?」と同議員はインターネットに掲載した請願書で訴え、これまでに12万3000人分以上の署名を集めた。「私は…理由はどうあれ、魚や肉を食べたくない子どもが健康的な食事をすることができるように、全ての学校の食堂に通常の食事の代わりとして、ベジタリアンの食事の提供を義務付ける草案を提出する」と語った。

■「豚肉を食べないだけ」

 学校の食堂で子どもたちに何を提供するかについての論争は、フランスで長年にわたり繰り返されてきた。1905年に国家と宗教を分離する政教分離法が制定された同国は、イスラム教徒やユダヤ人の人口が欧州で最も多い国の一つでもある。

 学校で子どもたちに提供する食事に関する包括的な指針はなく、全国の3万4000人以上の町長・市長が独自に決めている。

 多くの学校では、豚肉など肉料理が提供された際、宗教的な要求を満たすために代わりの料理を提供しているが、イスラム教の「ハラル」やユダヤ教の「コーシャー」食品など、宗教の戒律に従った食品を使った料理は政教分離に反するとして避けている。

 フランス市長連合会(Association of French Mayor)で学校給食の内容を監督するイザベル・マンション(Isabelle Maincion)氏によると、ハラルやコーシャー食品はもちろん、豚肉を提供するかどうかの議論が行われたことはないという。

「私たちは、バランスの取れた食事を提供するという、現在の規則に応えるだけ」で、「政教分離の学校では、それ以外の要求を気に掛ける必要はない」と指摘。「豚肉は頻繁に出されるものではないし、保護者たちもそのことを知っている。豚肉メニューの日は、子どもたちは豚肉を食べないだけで、夕食時に親がタンパク質不足を補う。簡単な話だ」と述べた。