関西の力

だし(3)京野菜給食、京都では小学生からだしの香りに親しむ 和食の良さ継承のために

【関西の力】だし(3)京野菜給食、京都では小学生からだしの香りに親しむ 和食の良さ継承のために
【関西の力】だし(3)京野菜給食、京都では小学生からだしの香りに親しむ 和食の良さ継承のために
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 椀(わん)の底が見通せる透き通った色合い。口に含むと、優しい味わいが舌の上にじわりと広がる。

 「昆布とかつお節でとった合わせだしは、日本人にとっては最高のおいしさを感じるもの」。京都市東山区の料亭「菊乃井本店」の主人、村田吉弘さん(64)は、こう語る。

知恵の結晶

 菊乃井では、井戸からくみ上げた水に昆布を入れ、60度で1時間かけてだしをとる。合わせだしの場合は、さらに温度を上げてかつお節を加える。

 精進料理などで肉類が使えない制限のなか、だしは日本料理を下支えしてきた。

 村田さんは「貧しさゆえ、あらゆる食材を試し、今のだしにたどりついたんやと思います」と語る。試行錯誤の末の知恵の結晶だったのだ。

豊富な成分

 うま味成分のもとは、昆布に含まれるグルタミン酸などのアミノ酸や、かつお節に含まれるイノシン酸などの核酸。特に昆布は100グラム中に多いもので3千ミリグラムと豊富なグルタミン酸を含むうま味の塊のような食材だ。

 海外でも和食人気が高まりつつあるが、村田さんは「日本のだしが世界中で好まれると思うのは大間違い」とも語る。

 例えば、昆布とかつお節の合わせだしは、魚介類をあまり食べない外国人には「魚臭くて焦げたにおい」と感じるのだという。

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 味を感じるには、匂いも肝心だ。「うま味は先天的だが香りは後天的だ」という龍谷大農学部の伏木亨教授(63)は、だしの香りに慣れていない外国人は、おいしさも感じにくいという。「かぜをひいたら味がよく分からないように、脳が味を感じるうえで、香りも重要」というのだ。

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