ガス復旧途上、生活に影 給食は簡易メニューで
大阪府北部で震度6弱を記録した地震では21日時点で約9万1千戸でガスが復旧せず、市民生活に影響が広がっている。学校では給食が作れずパンなどの簡易給食を実施。洗髪用のお湯を電気ポットで沸かす美容室もある。復旧が遅れる最大の理由は供給再開に住人の立ち会いが必要なため。大阪ガスは「人海戦術で進めているが限界がある」としている。
震度6弱を観測した大阪府茨木市の市立茨木小。21日から給食と午後の授業を再開したが、この日のメニューはウインナーパンとおにぎり、牛乳の3品のみだった。5年生の鈴井友一朗君(10)は「給食が再開してほっとしたが、あったかいごはんが食べたいな」と残念そうな顔を見せた。
同市では各校の給食室で調理が行われ、主食(米・パン)と牛乳、野菜や肉などの副食の計4~5品目が基本だ。ガスが使えないため、当面は加熱調理の必要がないメニューのみの簡易給食が続く。市教委の担当者は「栄養不足も心配。1日でも早くバランスがとれた温かい食事を出せるようにしたい」と話す。
茨木市と同様に一部でガスの供給が止まっている高槻市。市内の美容室「ヴィーナス」は19日に営業を再開したが、洗髪用シャワーでお湯を使えない状況が21日も続く。
苦肉の策として電気ポットで沸かしたお湯をクーラーボックスに注ぎ、水と混ぜて適温に調整。家庭菜園用のシャワーヘッドやポンプを使って、シャンプーをしている。
被災した自宅で風呂に入れない客からは「洗髪してもらえるだけでもありがたい」との声も上がるが、お湯の出ない急場しのぎの現状を説明すると予約をキャンセルする客もいるという。
同店の代表、対馬寿彦さん(43)は「満足のいくサービスをするためにも、ガスが早く復旧してほしい」と話す。
大阪ガスによると、震度6相当以上の揺れを観測した場合、ガス漏れなどによる二次災害を防ぐためその地域へのガスの供給を自動で止める。18日の地震では最大約11万2千戸で停止。水道など他のライフラインは21日までに復旧を完了したが、ガスを開栓できたのは約2万戸にとどまる。
今回の地震ではガス管の破損などは少なく、既に約9万3千戸分のガス管の修理や点検は終えた。ただ点火検査や安全確認のため、開栓には1軒ずつ訪ねて住人に立ち会ってもらう必要がある。大阪ガスは関東や九州のガス会社にも応援を要請し、計約4400人態勢で戸別訪問などを進めている。
しかし被災地の大阪府北部は大阪市に通勤する人らのベッドタウンで住宅が多いうえ、日中に不在の場合も少なくない。大阪ガスは「マンパワーにも限りがあり、開栓に時間をとられている」(担当者)としており、復旧完了は25日ごろを見込んでいる。
■首都直下地震は159万戸で停止想定
内閣府が2013年に発表した首都直下地震の被害想定報告によると、マグニチュード7級の規模の地震が発生した場合には、関東全域の約159万戸でガスの供給が止まるとされる。ガス管の点検や修復など、復旧には約6週間かかると見込んでいる。
11年の東日本大震災では東北を中心に8県の約40万戸で供給が停止した。復旧作業には東京ガスや大阪ガスなど全国約60のガス事業者が当たり、地震発生から54日目に全面的に供給が再開された。
経済産業省によると、当時は津波でガスを供給する施設自体が損壊したなどの理由で、復旧作業が難航したという。同省の担当者は「震災発生直後の段階では、供給再開のめどが立つような状況ではなかった」と振り返った。
■自動停止のシステム浸透が火災を抑止か?
大阪ガスによると、管内では全ての住宅に揺れを感知しガスを自動停止するメーターが導入されている。阪神大震災が起きた1995年時点の整備率は75%だったが、大規模な火災が発生したことを教訓に普及を進め、2年後に100%を達成。今回の地震による火災は7件にとどまり、同社担当者は「整備を進めたことが奏功した可能性がある」としている。
大阪ガスが家庭用に自動停止機能を備えたメーターの導入を始めたのは1987年から。震度5相当以上の震度を感知すると、ガス漏れなどを防ぐために自動でガスの供給が止まる。18日の地震は朝食の時間帯とも重なったが、火災は大阪府で3件、兵庫県で4件だった。