「給食をポケットに詰め込んで」 英小学校の貧困児童たち

ハナ・リチャードソン教育担当記者 BBCニュース(ブライトン)

Children eating canteen food in a school hall

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灰色の肌をした栄養不良の子供たちが、給食を「ポケットに詰め込んでいる」――。英イングランドとウェールズ各地から集まった小学校の校長たちはそう証言する。

校長たちは、一部の児童たちは見るからに様子が異なると話す。ある校長は、「私の(学校の)子供たちは、肌が灰色で、歯や髪がぼろぼろ、ほかの子たちよりやせている」と語った。

政府は、貧困に取り組む施策が講じられていると説明する。

かつての工業都市カンブリアの学校に勤務する、リンという名前だけを明かした校長は、英ブライトンで開かれた全国教育組合(NEU)の会合で、貧困児童の問題について記者らに語った多くの校長たちの一人だ。

増加傾向にある、貧困の中で成長する子供たちが直面する問題、またそれがいかに彼らの教育に影響するかを、校長たちは強調する。

「汚れた衣服」

リンさんによると、子供たちがお腹をすかせているのは、特に週末の後に目につくという。

リンさんは、「子供たちはポケットに食べ物を詰め込む。場所が違えば、盗みと言う人もいるだろうが、私たちはそれをサバイバルと言っている」と語った。

ノッティンガムシャーで働く別の校長、ルイーズ・リーガンさんはこう話した。「子供たちを催し物、例えばスポーツ・イベントなどに連れ出すと、裕福な地域の学校から来た同年代の子供たちを目にする。灰色の肌、顔色が悪い。(自校の子供たちが)顔色が悪いとはっきり気付く」

ルイーズさんは続けた。「月曜の朝が最悪だ」。

「お腹を空かせて学校に来ることが分かっている幾つもの家族がいるのを、我々は把握している」

「朝9時30分には、彼らは疲れてしまっている」

Child waiting at the school playground gates

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ルイーズさんによると、彼女の学校は何人かの生徒に綺麗な制服を支給しているが、生徒たちは週末を終えるとよく、汚れたままの同じ制服で戻ってくるという。

学校には、貧困児童たちに食料や衣服、靴、コートなどを配るフードバンクがあるという。

貧困とネグレクト

リンさんは言う。「学校には洗濯機があり、子供たちが体育をしている間に、子供たちの衣服を洗っている」。

「このような子供たちが、服が汚れているとレッテルを貼られるようなことはさせたくない」

学校はほかにも、休暇中に3週間のサマースクールを運営している。スクールは自発的な労働で運営され、教えるスタッフは無償だ。

ポーツマス市内の学校で校長を務めるハワード・ペインさんは、児童保護の問題がある子供の数は4倍に増えたと語った。

「これらの問題の全てが、貧困の中で生活していることと関係している」とペインさんはいう。

「これはネグレクト(養育放棄)だ。子供たち、またその家族たちは十分なお金がなく、食べ物や暖房、寝る場所さえも確保できないからだ」

温かい食事

自らの学校で債務返済に関するアドバイスや家族支援を提供するペインさんは、あるエピソードを語った。「3週間前、私たちの地域にある学校の多くは、雪のために閉鎖されていた」。

「私は自分の学校を開いたままにした。子供たちがその日、温かい食事をとれないのではと本当に心配だったから」

Child with her head in her hands sitting on the ground

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ハワードさんによると、生徒の45%がその日、食事のために学校を訪れたという。

校長たちは皆、社会支援や子供たちの感情支援をするサービスが減少していて、事態は悪化していると語った。

校長たちの話は、NEUが子供の貧困のための活動団体(CPAG)と共に行った調査結果の公開と共に発表された。

調査によると、貧困格差を埋めようと取り組む学校が増えており、調査に回答した900人のうち半数近くが、自らの学校がフードバンクや衣服の提供、あるいは家族に対する緊急融資など。貧困家庭への支援を一つ以上提供している。

「誇りを持つ家族」

調査によると、回答者の5分の4以上が、子供たちが日中にお腹を空かせている様子を目にしたことがあると答え、健康状態が悪いと分かる児童がいると答えた回答者の数も同じくらいに上った。

CPAGのアリソン・ガーナム代表は、「30人学級のうち9人が、公式な貧困ライン以下だ。困難に直面する家族のためのセーフティネットをすぐに再構築しなくてはならない」と語った。

リンさんはこう付け加えた。「私の学校に通う生徒の家族は誇り高い人たちです。親の何人かは2つや3つの仕事をしていて、福祉給付が受けられません」。

「彼らは稼ぎが数ポンドだけ基準を超えているために保障を受けられず、福祉給付で生活している人たちよりも持っているお金が少ない」

カーディフから参加した校長のジェイン・ジェンキンズさんは、自分の学校に通う児童の多くは昼食に1枚の食パンとマーガリンしか食べられず、教師たちが追加で食べ物を提供していると語った。

「これはとても難しい問題です。なぜ「リーグテーブル」(学力テストを基にした各学校の順位表)の順位が上がらないのかと、学力水準について尋ねられますが、それは二次的な問題であることが多いのです」

教育省は、全ての人が自らの才能に応じた教育を受けられる国を作りたいと語った。

「それが社会的流動性に関する行動計画を発表した理由だ。この計画は、経済的に不利な状況にある学生とそうでない学生との間にある学業到達段階の差を縮めるための対策を盛り込んでおり、最も支援を必要とする対象地域に7200万ポンド(約108億円)を供給する『機会地域プログラム』もある」

同省の報道官はまた、経済的に不利な状況にある児童に特別予算「ピューピル・プレミアム」を通じて25億ポンド(約3738億円)を投資することと、学校が児童に朝食を提供する「朝食クラブ」に直近で2600万ポンド(約39億円)投資したことを強調した。