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小学校の食物アレルギー対策、養護教諭が中心的役割…予想外の発症にも備え万全

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小学校の食物アレルギー対策、養護教諭が中心的役割…予想外の発症にも備え万全

職員室で保管する児童の注射薬を点検する湯田さん(1月23日、福島県郡山市立大成小学校で)

 「給食中や昼休みは特に気が抜けない。食物アレルギーがないと思われていた児童が発症することもある」

 1月下旬、福島県郡山市立大成小学校の養護教諭・湯田厚子さん(60)は、昼休みに校庭で雪遊びする児童を見ながら語った。

 大成小は毎年、家庭の調査票などを基に食物アレルギーを持つ児童を把握する。しかし、2016年の2学期、リストに載らない低学年の女子児童が給食でピーナツのあえ物を食べて吐き、保健室にやってきた。外見に問題はないように見えたが、保護者に迎えに来てもらい病院での受診を勧めたところ、アレルギーと判明した。

 湯田さんは「家庭に比べ、給食の食材は幅広いので、初めての食材もあるのだろう」と推測する。

 約780人が通学する大成小にも卵や乳製品、そば、ナッツなどにアレルギーを持つ児童が約40人いる。

 学校では、主任栄養技師を中心に個々の児童に応じてアレルギー物質を除いた給食を調理する。除去されていない料理を誤って食べないようにアレルギーを持つ児童のおかわりを禁じ、遠足時のおやつ交換も認めない。生命にかかわる重いアレルギー症状を発症した際に使う自己注射薬「エピペン」を職員室に保管し、万が一に備える。

 湯田さんは30歳代の頃、キウイフルーツを食べて顔を腫らした児童をすぐに病院に連れて行き、大事に至らなかった経験がある。キウイによる食物アレルギーが広く知られる前のことだ。湯田さんは「命を預かっている以上、もしかしたらという視点が大切」と肝に銘じる。

 アレルギーを持つ子どもへの支援には周りの理解も欠かせない。

 「命にかかわることもあるので、関心をもってもらえるとうれしい」

 東京都墨田区立 曳舟ひきふね 小学校では昨年10月、卵や乳製品にアレルギーを持つ女子児童が全校約380人の前でアレルギーと向き合う気持ちを打ち明け、理解を呼びかけた。女子児童のクラスでは、こぼれた牛乳が体に付かないように牛乳瓶を離して置いたり、アレルギー物質が入った食物を食器に盛りつける作業を別の児童が代わったりしている。

 母親の手紙も読み上げられ、「皆さんに見守られて安心して学校生活が送られる」と感謝の思いが伝えられた。

 企画したのは、養護教諭30年以上の 小瀬良こぜら 初代さん。「当事者の気持ちを知ることで、周りもしっかり気をつけてくれる」と話す。

 順天堂大の 釆女うねめ 智津江教授(学校保健)は「アレルギー疾患には、全教職員が緊急時に適切に対応できることが必要だ。専門知識を持つ養護教諭には、校内研修の充実や体制整備で中心的な役割を果たすことが期待される」と指摘する。

           ◇

食物アレルギー 】 卵や乳製品、小麦、大豆など特定の食べ物を摂取した後にじんましんや 嘔吐おうと 、呼吸困難などの症状が出る。日本学校保健会(2013年度)によると、小学生4.5%、中学生4.7%にアレルギーがある。12年には東京都調布市の小学校で、乳製品にアレルギーのある女児(当時5年生)が、給食でチーズ入りのチヂミを食べて死亡する事故が起きた。

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