全国のパン屋さんを巻き込んだ道徳教科書の検定をめぐる騒動は、3月24日の検定結果公表を受けた「パン屋、郷土愛不足」などの一部報道が引き金となった。「郷土愛不足を理由にパン屋を和菓子屋に書き換えさせた」との誤解が広がり、パン屋さんの怒りを伝える報道も繰り返された。政府は、検定でパン屋さんが郷土愛不足とされた事実は「ない」と否定したが、パン屋さんのやり場のない怒りはくすぶっている。背景には、「郷土への関心を深める」ことなどを掲げた学校給食の米飯推進により廃業が続く現状があった。(社会部 寺田理恵)
パン屋さんに取材殺到…答弁書で歯切れの悪さも
4月7日、政府は「『パン屋』の記述に特定して検定意見を付した事実はない」とする答弁書を閣議決定し、複数紙が報じた。
騒動当初、「心外だ」と憤りの声を上げた製パン大手の団体「日本パン工業会」(東京)の役員は、「ニュースでパン屋が和菓子屋に変わったと聞いた。パンが日本の食文化であることを否定されたら怒るが、そうでないという報道もある」と歯切れが悪い。